フィールドの違う論点がぶつかるから揉め事が起こる

Twitterで目に止まった記事です。

この記事の具体的な内容については触れるつもりはありません。


ただ、読んでいてとても違和感を覚えたことが2点あり、それが書きたくて。



まず1点目。


「情」と「法律」の違うフィールドをごっちゃにしている


ということ。


「派遣切りされた」ことに対して、


「理由は分かりません。何も教えてくれませんでした。 悔しくて言いました。「あなたたち(派遣会社)も、私たちを派遣して得た金の一部をもらって給料を得ているはず。何か言うことはないのですか」 返事はありませんでした。(本文引用)」


「いきなり会社名が刻んであるプレート板を、こぶしで何度も叩いた。「この会社が私の人生を搾取したんです!」。そして首にぶら下げている「入館カード(security card)」を取りだしてこう言った。「私を雇い止めにした総務部の最後の言葉は『最後の日にこのカードを返してください』のたった一言でした。このカードぼろぼろでしょう。私みたい...」と絶句した。本当にすり切れていた。職場に入退室するたびに長い間使ってきた「入館カード」だった。「壊れたコピー機を取り替えるのとは訳がちがう。私は人間だ。まして故障もしていない」と声を振りしぼる。(本文引用)」


というのは、論点が全然違う。

派遣会社の人が何も言うことがなかったのは、感情論に対して何も言うことがないからであって、それは当然のこと。

逆に「情」にまかせて愛人とか自分の息子の就職を斡旋しちゃったりなんかしたほうが大問題。そうなってはいけないから、きちんと切り離している正しい姿だと思います。


仕方がないけど、それでいい。それが法律。

もうひとつ論点がすり替わっていることが文章の最後にドバっと出てきます。それが、


「女性の労働環境」


について。


読み進めていくうちに、なぜこの話題になったのかと驚きました。法改正されて派遣切りに遭うケースの話題だったのに、なぜいきなり女性の雇用問題になったのか。それはあまりにもおかしい。


派遣社員は女性が多いと言いたいのだろうが、ちょっと待ってほしいのですよ。


境遇などはどうあれ、その仕事を選んだのは本人である、という点。

だいたい、派遣社員という働き方を選んだのはその人以外の何者でもなく、だから、派遣社員がどんな労働条件かわかって就職したのだろうから(わかってなくても自己責任になるのは理解しなきゃいけない)、そこをいきなり揉め事の火種に、しかも今回の記事の主旨とは全然違う「女性」というキーワードを出してくるのはおかしいと思うんですよ。


こういうときの切り札みたいに「女性」を使うのは良くない。

そんなカードの使い方をすればするほど、男女平等社会の距離が縮まらないのを理解してほしいです。

テレビはだいぶ前からうんざりしてるのでほとんど見てません。そのぶんネットでニュースやこういった類の記事を読むことが増えました。


しかし思うのは、今回のように論点が違うものを掛け合わせて問題提起している文章がとても多いということ。


揉め事の原因と同じです。ほとんどの揉め事って、お互いが主張する話題のフィールドが違うから解決せずに盛り上がっちゃうんですよね。一番多いのは今回と同じく「情」と「律」でぶつかるパターン。


ネットにニュース記事を書いている人も、ちゃんとした記者じゃない場合も最近はかなり多そうで、こうやってわざと読者感情を煽って注目を集めようと楽しんでいるのか、取材した人の情が移って、偏った記事になってしまったのかわかりません。でもとにかく頭悪い記事書く人が多すぎて辟易します。リテラシーが足りない。


しかもそれに煽られて、きちんと理解しないままに「ねえこれひどくない?」みたいに伝言ゲームしちゃう人たちが多いから、炎上するんです。



誰でもなんでも配信できる今の時代だからこそ、それが事実なのかを調べなければ次のステップに進んではいけないと思います。もしその気力がないなら、これ以上関わらないほうがいいと思います。

そのどちらかしかありませんが、とにかくまず疑ってかかるのが基本でないと、振り回されっぱなしになります。




荻原明(おぎわらあきら)

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