YouTubeでやたら上手な小学生がいるぞ、と思って見てみたら東京音大の同級生の息子さんだった、というのはもうだいぶ前の話です。
最近は毎晩アップされる隼人くんの動画を見るのが日課になっていて、その飛躍的な上達に目を奪われていました。彼はまだ小学6年生。ちなみに僕は小学6年生の時、ファミコンしかしてませんでした。
そんな彼が北海道から東京に来てリサイタルをするとのことで、この日を楽しみにしていました。
まだ完成して間もないヤマハホールは音響の素晴らしい素敵な空間でした。
演奏曲を見ると、音大生が取り掛かるような作品が並んでいます。
どういうこと?
それぞれの曲はYouTubeで連日断片的には聴いていたので、十分演奏できる実力があるのは知っていましたが、こうしてプログラムが並ぶと小学生が取り組むようにはどうしても思えない。凄すぎる。
演奏はやはり裏切りませんでした。
隼人くんの音は丁寧で温かく、澄み切った川のような軽やかな流れがあり、聴いていて大変心地よいのです。なぜあんなにも安定して演奏できるのだろうか、と感心してしまいます。
体はまだ小さいけれど、その体で楽器を効率的に響かせる完全なバランス感覚が彼の中には多分ですが無意識にあるのだと思います。成長期で体のバランスは日毎に変化しているはずなので、理屈で「体をこのように使ってバランスを整える」と決めることができないし、そんなこと考えてあのような演奏ができるとは思えません。
とにかく無理に吹かない。呼吸も筋力も極めて小さい範囲で効率良く使っているように客席からは見えました。バランスが安定していると楽器は自然と響くのだ、というのも良くわかり、勉強になりました。
途中、MCも務めていましたが、喋りになると途端に小学生らしくなって可愛くて、途中入場してきたかと思ったら三脚付きのスマホを持ってきて、毎日YouTubeにアップしている動画の撮影をステージで始めたり、
プログラムにあるようにシューマンの「子供の情景」をピアノで演奏して...普通、リサイタルでピアノの作品が入っていたら、ピアニストがソロを演奏してもらっている間に休憩するんですけどね、自分で弾いてしまいました。しかもピアノもめっちゃ良い音で、フレーズ感はトランペットと同じように美しく、大変に音楽的でした。
このような盛りだくさんのリサイタルを小学生の段階でできてしまうと、さてこの先どこへ向かうのか見当もつきませんが、行けるところまでどんどん行って欲しいと思います。
応援しています。素晴らしいコンサートありがとうございました!
荻原明(おぎわらあきら)
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