彼女がこうした進化を遂げるとは誰が想像しただろうか。
...うん、多分薄々感じていた人は多いと思う。
岩田恵子氏のことです。
敢えて「トランペット奏者の」という肩書きを付けずに紹介しますが、先日2月19日に、もはや彼女にしかできないコンサートが開催されました。その名も「岩田恵子個展Ⅰ 全部いわたコンサート」。
開催会場が静岡なので行くことはできませんでしたが、ありがたいことにアーカイブで視聴させてもらいました。
改めまして、岩田恵子個展I〜全部いわたコンサート〜無事に終了いたしました!
— いわたけいこ。らっぱと作編曲家。 (@Keiko95349) February 20, 2021
このコロナ禍の中勇気を出してご来場いただいた皆様、またお忙しい中配信でご視聴していただいた皆様、本当にありがとうございました。
関わってくださった全ての人に感謝です! pic.twitter.com/avCEPlNr1Y
岩田恵子氏は東京音大のトランペット専攻の同期です。大学の4年間を一緒にすごしてきた友人で、このコンサートは本人いわく自分のルーツをたどっていく選曲にしたそうで、コンサートの曲間で話す内容が、いろいろと懐かしい。
岩田氏は前述の通りトランペット専攻として東京音大に入学しましたが、トランペットに止まらずピアノの演奏スキルが異常に高く、耳の良さ、いわゆる絶対音感の持ち主であり、そうした音楽スキルを良い意味で自分の楽しみに利用する方法をいくつも知っている人でした。
音大は当然専攻楽器の実技試験があります。僕が大学1年の時に選曲したのが、ナカリャコフがCDに収録していた「チロルの歌による変奏曲」で、無謀にもナカリャコフの完コピをするという企みを持っていて(大学1年の時からすでに不真面目で不純だったのがわかると思いますが)、ピアノの伴奏も完コピしてほしかったので(CD音源と同じ楽譜がなかった)、そのピアノ伴奏を岩田氏に耳コピして弾いてもらったのを今でも鮮明に覚えています。
本当に今更ですけど、実技試験で自分のトランペットの演奏もあるのに、よく伴奏を引き受けてくれたなと思います。ご苦労様でした。
彼女のスキルに驚き、また羨ましく思っているのがその音感の能力です。東京音大のトランペット専攻生による自主コンサートというのが昔から続いていまして、そのコンサートの中には学生全員で演奏する「大編成」という企画があります。僕らが学生の時、彼女がアンコールの編曲を受け、五線紙と鉛筆だけで(ピアノなど使わず!)、何やらフンフンを歌いながら楽譜をどんどん埋めていき、実際に合わせてみたら素晴らしいアメイジンググレイスになっていたあの衝撃は今でも覚えています。しかも、もはや編曲という領域ではなく、アメイジンググレイスのメロディだけが存在しているまったく違う作品に作曲していく彼女の手法は学生の時から健在だったわけです(今回の個展を聴いてもらえるとわかります)。
トランペットが吹けて、ピアノが弾けて、作編曲スキルと音感がある。これだけでももう十分すごいことですが、卒業してから地元の静岡に戻ったこともあり会う機会も減って数十年が経過し、SNSで再び目にするようになったら、ドラムを叩きながら「一人トランペット吹きの休日」をやるなどの変態に進化しており、宅録の動画配信やライブ配信なども積極的に行って音楽家の繋がりがものすごい広くなっていました。
今回開催された「個展Ⅰ」はそんなスキルを全部出した構成でしたが、最も興味深かったのはYouTubeで行っていることをそのままコンサートホールのステージで行っているというバーチャル空間とリアル空間の使い方の妙。
これは、ヒカキンがイベント会場に登場するようなユーチューバーがリアルの場所に出てきて人と触れ合うのとは少し違って、多分リアルタイムで客席にいた人は、今自分がいる次元が不明瞭になっていたのではないか、と思うのです。
岩田氏を見ていると、やりたいと思ったことはいつでもやっていいし、チャレンジすることをいくつになっても続けていって良いんだ、そして楽しむことを忘れちゃだめなんだ、と言われているような気がしてハっとします。
何とこのコンサートはしばらくの間無料で見ることができます。ぜひご覧ただきたいです。既成概念が壊れます。
とても楽しませてもらったしプログラムも欲しかったのでBASEで少しですがお礼をさせてもらいました。
変態への進化はもうだれも止められない。
荻原明(おぎわらあきら)
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