もうずっと昔の、高校生の頃の話ですが、音大を目指して必死になりすぎていたことや、他にもいろいろあって音楽に関することに限って「絶対誰にも負けない!」と思いすぎるあまり精神が非常に不安定だったことを覚えています。
そんな状態で自分の同級生やらが参加している吹奏楽部のコンサートを聴くとどうなったか、と言いますと、良くないところ、気になるところにだけ意識が集中してしまいました。ミスをした回数を数えていたり、ピッチが悪いところを覚えようとしていたり。そもそも最初から「悪いところを指摘してやろう」的な姿勢で客席に座っていた状態ですから、音楽を聴いて楽しむなんて微塵もなかったわけです。
音楽との向き合い方を完全に間違えた状態です。タイムリープして過去の自分に会えるとしたらスリッパで思い切り頭をひっぱたいて説教したいくらいです。
音楽に限らず物事は陽に当たった部分に視線を置くか、その陰になった部分に着目するかで印象が大きく変わるように、自らの意思で受ける印象を操作できます。良く言われるのが、その人の良いところを見て接するのか、悪いところを見て嫌うか、なんて話です。
レッスンをする際にとても大切なことだと思っていますが、生徒さんの良いところを必ず受け止めて、それがもっと良くなるために、いわゆる「あまり良くない部分」「方向性を修正すべき部分」「新たに手に入れる必要がある内容」を言葉に注意しながら提案する姿勢であるように心がけています。
レッスンに限らず音楽というのは総じてこのようなポジティブなコミュニケーションの上で成立していくのだと思います。
ですが、僕の高校生の頃のような人間は大人になってもいるんですね、悪いところばかりに目をやって、どれだけ酷い演奏をしているのか、良いところなど皆無であると、これでもかと言うくらいズタボロに崖っぷちまで追い込んで落っことしてやろうと悪意剥き出しで攻撃してくる人というのが。
そのような人間は音楽をする資格などないどころか人として失格です。でも、大人になってからこうなってしまうと(いや、最初からずっとこの状態で、表面に出したか出さないか、なのかもしれませんが)きっともう治りませんね。不憫です。
音楽は良いところを見て心を暖かくしていく健康な存在でありたいものです。
荻原明(おぎわらあきら)
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