いろんなところでお話ししていますが、僕は吹奏楽部に入った中学1年生から1年半くらい楽譜がほとんど読めませんでした。音の高さと、トランペットでその音を出すための運指だけ理解していて、リズムが全然わからなかったので、音源を聴いて暗記して吹いている、そんな感じでした。
そんな状態ではありましたが、大好きなドラクエの音楽の楽譜や久石譲氏のピアノ曲を演奏したいと試行錯誤していくうちに、なんとなく楽譜の理屈やパターンのようなものが見えてきて、それはまるでジグソーパズルのピースがつながっていくようでした。
吹奏楽部は夏になるとコンクールがあるので、冷房などない体育館などで一日中合奏をしていたのですが、ひとつの作品を追求して合奏していると、最初はとにかく楽譜に書いてある通りに演奏することが精一杯だったのが、全員がある程度楽譜の情報を再現できるようになると、「もっと歌って」「フレーズ感を出して」「ハーモニーを美しく」など要求も少しだけ音楽的になってきます。
しかし、当時何も知らない中学生の僕が最初に思ったのは「いや、楽器吹いてるから歌なんで歌えないでしょ(真顔)」でした。「ここは4小節フレーズだ」と言われても、なんのことだかさっぱりでした。
最も投げかけられた言葉は「音程!」です。しかし、音程って結局何なのか全然わからないし、合奏前に部長さんがキーボードでずっとB音を鳴らし続けて、片手にチューナーもってひとりずつ音を出して「高い」「低い」と言われているそれも結局何をしているのかもよくわかってませんでしたし、高いと言われて直せるかと言われればそれもよくわからない。気づいたら主管を4cmも5cmも抜こうとしていたり(でもなんか高い)、そんなチューニングという謎時間が1時間続いて最終的にその時の指導者にめっちゃ怒られる。
ちなみに、その前に出てキーボード鳴らして高い低い言ってたのは、何を隠そう部長やってた僕なんです。エラそうに言うだけ言って自分が理解してませんでした。
ちなみに、チューニングした直後に全員で音出すとピッチめちゃくちゃでした。
もう、何言われても何もわからないのです。当時はインターネットもなかったので調べるのも限界があって、情報源と言えばバンドジャーナルとバンドピープル(という雑誌が当時ありました)くらいでしたが、中学生はそんなにお金がないので週末ヤマハで立ち読みするしかなく、読めたとしても内容がハイレベルで結局よくわからない。ワードだけ手に入れて根本を理解していない頭でっかちの完成です。
このように、言われるだけ言われて、それが何なのかさっぱりわからないので、対処もできず、そうなると結果的にどうなるかわかりますか?
できるだけ大きな声で、「ハイッ!!!!!!(しらんけど)」
と叫ぶんですよ。それしか方法がない。だって黙ってたら怒られるし。
音程音程と怒鳴っていた外部のアマチュアの指導者も、今となって思うのは、改善方法を知らなかったのだと思われます。結局のところ合奏はダメ出しをされて困惑し、気合で乗り越える時間だったわけです。そこが最も問題点だと思います。
この環境ではどれだけ時間をかけても、どれだけ情熱があっても絶対に上達しません。
さてここで問題です。この環境に足りなかったものは何でしょうか。
そのひとつが「楽典」です。
楽譜が、西洋音楽が、どのようなルールや基盤の上に成り立っているのか。それを理解する必要がありました。「楽典」は音大受験のペーパーテストなどではありません。音楽を正しく理解するための基礎知識、いわば交通事故を起こさないための道路標識の理解や、運転する上でのルールです。これをみんなが共通して理解しているから日常、交通事故は起こらないのです。残念ながら起こってしまう交通事故のほとんどはそのルールを無視したか、ルールに逸脱した何かが起きたときに発生するものです。
多くの吹奏楽部では演奏における交通事故が多発しているために、なかなか統一された完成図が生まれない、と考えると楽典の大切さが少し見えてきますでしょうか。
そして、あざとく宣伝しますが、今年4月からオンラインで開催しました楽典講習会のアーカイブをBASEにて販売しております。テーマに分けて1時間でお話ししています。毎回そのために作成したオリジナル資料も一緒にプレゼントしますのでぜひご活用ください。
お求めはBASEにて。
年末年始の空いたお時間にぜひ。
荻原明(おぎわらあきら)
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