「あなたは男の子なんだから、どうやって家族を食べさせていくの?」は高校1年生にとっては難しい質問でした。

およそ20年ぶりに音大に関わるようになって大きく変わったと感じるのが、僕が学生だった時代、それこそ30年近く前の「進路を音大へ定める時の周りの反応」です。


まあ、30年も経てば世の中のほとんどは様変わりしますから当然といえば当然なんですが、ただ、音大受験対策レッスンをしている先生方の多くは僕と同じくらいの世代の方も多いわけで、「当時の音大受験事情」が記憶の中に強く根付いているために、現在の受験事情との温度差を感じることも少なからずあります。


僕は中学3年の時に音大に行きたいと考えるようになりました。具体的な受験対策レッスンを始めたのは高校生になってからで、まずは独学だったピアノをなんとかしなければならないと、中学の友人が通っていた近所のピアノ教室を紹介してもらい、音大に行きたい旨を伝えたまず第一声が「やめたほうがいい」でした。これは結構ショックです。だってピアノのレッスンも始めていなければトランペットの演奏も聴いていない段階で、進路の希望を伝えただけで「やめたほうがいい」ですよ。理由としては


1.音大受験は厳しい(生半可な気持ちでは合格しない)

2.音大に進路を定めたら変更がきかない


そして最大の衝撃理由は


3.あなたは男の子なんだから、どうやって家族を食べさせていくの?


でした。時代ですね。確かに、僕は音大受験理由が「プレイヤー志望」だったということが「やめたほうがいい」につながったきっかけではあります。それに加えてこちらのピアノの先生、年配の女性の方だったのでさらに前の時代に音大を受験し、卒業をされているので、こうおっしゃるのもわからなくもないのですが、それにしても高校1年生にこの話はまるで実感が湧きませんでした。


確かに今も昔も音大を出て演奏家として生きていく厳しさは変わりませんし、今のほうがもっと大変かもしれません。


まあ当時から頑固人間だった僕はそこで気持ちが揺れるなんてことは一切なく、結果的に先生も納得してくださってピアノの基本と聴音のレッスンをしばらく受けることになり、しかもトランペットの津堅先生を紹介してくださったのもこの先生経由だったので、感謝しかありません。


一期一会。


せっかくなので音大受験のお話を何回か分けてしてみたいと思います。とりあえず続きはまたの機会に。



荻原明(おぎわらあきら)

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