課題曲のコンセプトとは

課題曲。思えば中学校の合唱コンクールにも課題曲がありました。規模の大きいソロコンクールの場合はむしろすべて課題曲で構成されていることも多いです。そして個人的には課題曲と言えば吹奏楽コンクールが頭に浮かびます。


自分の中で消化しきれていないのですが、こうした課題曲というのはコンクールにおいてどのような位置付けなのでしょうか。


例えば、音大生が実技試験で演奏する作品には、「コンクールのための〇〇」というタイトルの作品や、そもそも何かの試験やコンクールのために書かれた作品が結構あります。あまり聞きなれない名前が多いかもしれませんが、トランペットだと、ボザ、シャルリエ、シャイユーなど。そうした作品の共通点は、短い作品の中に歌う表現(アゴーギク)、低音域から高音域までの広いメロディ、ダイナミクスレンジ(強弱の幅)、素早いタンギングなど、言ってしまえば奏者の演奏技術がチェックできる部分だけで構成されていると言っても良いくらいです。


なので、これをコンクールや試験で演奏する場合、審査する側は何を見れば良いか明確です。


では吹奏楽コンクールの課題曲は、どのような存在なのでしょうか。当然作品にもよりますが、一体この作品で何を確認すれば良いのかわからない、というものもあります。

もしくは、いくつもの団体が同じ作品を演奏することで、その比較や審査員的には「あらかじめ知っている作品」という位置付けで確認ができるというメリットなのでしょうか。でもそれだったら課題曲は1曲に絞ったほうが良いですよね。


このあたりが良く理解できていません。


先日、昔の課題曲に触れる機会がありました。生徒さんがコンサートで演奏するとのことで持参された1990年度の課題曲「カタロニアの栄光」。作品は知っていましたが、楽譜を見たのは初めてでした。レッスンしながら吹いてみて感じたのが、高音域、強弱、インターバル(広い音程の素早い移動、しかもG音のオクターブが多発)、タンギング、リップスラー、リップトリルなど、様々な要素が(しれっと)散りばめられていて、それらの技術が備わっていないと絶対苦労するな、というのがあからさまな楽譜でした。

ですから、楽譜から一旦離れて、それぞれのテクニックはどのように手に入れるのか、体の使い方、練習方法、オススメ教本などをお伝えしました。


この作品がしっかりと通せるようになったら、トランペットに必要な様々なテクニックを手に入れたこととつながるわけで、これぞ課題曲じゃないか!と感動したわけです。

これが偶然なのかわかりませんし、他のパートがどうなのかもスコアを見ていないのでわかりませんが、少なくとも、コンクールのステージでトランペットの技術的な面に関しては評価の仕方が明確です。

他にも、あまり覚えている人がいないのですが、1996年度の課題曲「クロマティック・プリズム」は、そのほとんどすべてがタイトルの通り半音階で構成されている実験的な作品で、良い曲かどうかは別として、課題曲としては意義のある存在だったと感じます。


課題曲の選考や、コンセプトについて調べていないので言いたい放題になりましたが、せっかく課題曲を用意するなら、その作品にチャレンジした結果、明確にレベルアップできたらいいのにな、と思ったのでした。



荻原明(おぎわらあきら)

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