お正月だし、レッスンも入れなかったのでダラダラと過ごしても誰も文句言わないし、そういったペースを自分勝手に作ることができるのもフリーの特権かもしれません。
昔から管楽器の世界では「1日休むと3日戻る」という言葉が使われます。
1日練習していないと、3日前の状態に戻ってしまう。だから練習は毎日コンスタントにするべきだ。
そんな意味だと思います。
いかにも日本人的であり、日本人好みの言葉。
この言葉は、人称によって捉え方が少し変わります。
「自分自身のため」と考えると、「練習をサボるな」と、もっと魅力的な誘惑に負けないための壁のような存在として捉え、自分に勝つための言葉。
もうひとつは「他の人が練習を頑張っているのに、おまえはどうなんだ?」という競争相手と比較し、勝つために奮い立たせる言葉。
僕はこれまでにブログなどで「1日休むと3日遅れる」の言葉に対して否定的な捉え方をしていると言っています。そんなに肩肘張らなくてもいいじゃないか、楽しく演奏できることが一番なのだから。
そんな感じで伝えています。
しかし、実は自分の中にはこの言葉が染み付いてしまっていて、未だに楽器を練習しないことが罪のような気分になり、練習しないことがストレスになってしまう体質なのです。
そういう環境下でまるで戦後間も無くのような軍隊的吹奏楽部に所属していたことが起因なのかもしれませんが、音大受験や音大に入ってから痛感した「自分はこれだけ努力しても周りの人のレベルと肩を並べることができないのか」という失望感が非常に強くあり、効率よく練習することや解決するための根底にある部分を見つけて改善するなどと言った器用で賢いことが当時まるでできずに、ひたすら吹いて解決する悪い習慣を持っていたのです。
それではいけないと効率性と原理的な面を重視した研究を重ねて今があります。
おかげで今は学生の頃のようなアホな練習はしなくなりましたが、やはり「1日休むと3日遅れる」呪いはそう簡単に離れてくれません。
僕の場合、とても不安定なバランス感覚で楽器を吹いていて、ちょっと崩れると本当に自分ではないような(自分自身が納得できない)演奏にすぐなってしまうのです。
そうならないための最も強力な安定剤は、「毎日コンスタントに吹くこと」だということが現在も自分の中に強くあり、実際にそうなのです。
僕はレッスンで「楽器を上手に演奏するために必要なのは「バランス感覚」である」と常に言っています。
からだの様々な部分がトランペットを演奏する上で最適なバランスを保っているこの感覚は数値では決して表せませんし、言語で説明するのも非常に困難です。そもそも、言語化できたところで、この感覚によって演奏が安定しているのは僕だけですから、言う必要もありません。
だから自分自身の中にも具体的な存在としてストックすることができずにいるので、それが「1日休むと3日遅れる」精神と重なって、毎日吹かずにはいられないということなのです。
しかし体力的にも精神的にも休息が必要なのも重々承知なので、一週間に1回は強制的に休むようにしていますが、それが2日3日と続くのは、かえって精神衛生上よろしくない。これをなんとかしたい。
でもまたバランスが崩れて思うように吹けなくなってしまうのも非常にストレス。
練習を毎日コンスタントに続けることは決して悪くないですが、もっとゆとりを持って楽器と向き合える精神と、強力なバランス感覚を身につけること。このあたりが近々の解決すべきテーマかなとも思います。
荻原明(おぎわらあきら)
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