できないことをバカにするのは最低です。


この番組(コーナー)ってまだやってたんだ!休日の日中は仕事で家にいないので最後に見たのは数年前ですが、昔からとても嫌いでした。

女性がー、料理がー、を超えて、できないことを他人がネタにして笑うってホントに最低な行為だと思います。


たくさんの方にトランペットのレッスンをしている身としては、生徒さんはわからないから、できないからレッスンに来てくださっているのであって、これはとても素晴らしいことです。わからないこと、できないことができるようになりたい、そんな気持ちを強く持った方へ僕はできる限りの知識や経験から生まれた方法などを伝えていく、そんなことをずっとしています。


そんな僕がもしレッスンで「なんでそんなこともできないの?ケラケラケラ」とバカにしたら、みんなどう思いますか?「なんて最低なヤツだ!」とお怒りになるでしょう。人間として最低なヤツだ、って思うでしょ?僕はそう思います。


料理という日常的に行っている人口が多い行為は、確かに立派にできる人が多いと思いますが、でも立派に料理ができる人だって最初から完璧にできていたわけではなく、学び、体験し、失敗し、研究した結果、今があるはずです。生まれた瞬間に肉じゃがを誰にも教わらず完璧な味に完成させられたらその人はおそらく神であり、水をワインに変えてしまうかもしれません。


そんな料理を知識や経験のない人間をダシにして面白おかしく編集し、バカにするなんて最低最悪の行為だし、それをメディアがやってるなんて頭おかしいとしか言えない。そんなだからいじめも起きるんですよ。


トランペットの話に戻しますが、トランペットは高い音を出すことが苦手と感じる方がとても多くいらっしゃいます。なぜそうなるのか理由を簡単に言うなら、高い音は「いくつかの正しい方法の連鎖」によって出るからです。高い音を出すための必殺技のようなものはなく、まず最も基本的な「音の出し方とそのセッティング」が正しくなければその先は行き止まりとなり、高音が出せる可能性はいきなり消滅してしまうのです。僕はこれを「歯車の正しい噛み合わせ」と表現して解説しているのですが、生徒さんによっては過去に強引な方法で出していたそのクセがどうしても抜けずに、僕の解説が頭でわかっていても正しい歯車の噛み合わせをどうしても手に入れられない方が結構いらっしゃいます。

そのもともと持っていた間違った方法のクセを使ってしまえば歯車はすべてが間違った噛み合わせに変わってしまうので、なんとかして正しい方法に軌道修正したいのですが、例えば本番のように一発勝負になるとどうしてもクセが出てしまいます。


なぜそうなるのか。その理由のひとつは「脅迫観念の産物」です。


これまでに僕ではない人のトランペットレッスンや合奏で、できなかったことを「なぜできない!」と怒られたりバカにされるように言われたり(教える側の力量不足が原因)した経験が歯車の正しい組み合わせに修正できない原因なのです。


昔、テレビの人気番組で全国の吹奏楽部を紹介するコーナーがあり、その中で指導者がトランペットの子に「絶対ミスするな!」と叫んでいたのを見て心底呆れ返りましたが、まさに演奏者を追い込み、音楽そのものをダメにしている典型的なダメ指導。こんな人がいる限り吹奏楽は他の音楽ジャンルから距離を置かれ続けてしまうのです。いい加減気づいて欲しい。



できないことには必ずできない理由があります。

できないことをできるようにするためには、できない理由を見つけ、正しい方法を手に入れるために、正しい工夫や正しい研究や正しい努力をするのです。

その正しさの継続によって少しずつ自分の中で「できないこと」が「できること」に変化していくのです。



あの番組のコーナー、いい加減廃止にして欲しい。




荻原明(おぎわらあきら)


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