楽器選定は難癖をつける行為ではありません

クラリネット奏者の吉崎氏のツイートに共感したので、拝借いたしました。


生徒さんの楽器選定をすることがたびたびありますが、その時に必ず生徒さんから「どうやって選べば良いのですか?」と質問をされます。

たしかに、難しいですよね。見た目が同じだから判断基準がなさそうに感じます。

これがもし洋服だったらどうでしょうか。色が好き、デザインが好き、着心地が良い、そして値段も考慮しますよね。


楽器もそういうことなんだと思います。


自分が様々な角度から良いと思ったものを選びたい。


そしてもうひとつ選ぶ時に大切なのが、品質。自分にとって最良の服を選んで着てみたら、すぐにボタンが取れてしまったり、破けてしまったり。そうなってしまうのは残念ですから、可能な限りチェックはしたいところですが、それはやはり専門的な目が必要です。

洋服なら、まだ交換したり返品したりもそこまで負担が重くありませんが、楽器はレベルが違います。


ただ、僕は楽器メーカーを信じています。なぜなら、低品質の楽器が長年シェアを維持できるはずがないからです。もちろん、会社経営の変化や価格帯、シェア率の低さ(あまり聞いたことのないメーカー)などは慎重に確認はしますが、そうしたメーカーだって会社が潰れることは恐れているに違いありませんから、まずは認める。


そして何を見ているかと言うと、方向性、コンセプト、いわば個性です。その楽器が最も本領を発揮したときに、それが見えてきます。この楽器がオーケストラの中で鳴り響いたら素敵だろうな、とか、ビッグバンドでかっこいいパフォーマンスができそうだな、とか。初心者の人でも鳴らしやすそうだとか、音のツボに当てるのは大変だけどクリーンヒットした時の爽快感はすごい!とか。

およそメーカーや同じ型番の楽器はそれらが一貫しています。


楽器選定の時にはそうした個性を理解した上で、生徒さんの経験年数や実力、目指す(イメージしている)方向性、どういった場面で演奏することが多いのかを鑑み、選定していきます。


この場合、自分の楽器を選ぶわけではないので自分の好みを押し付けることはしません。


このようにして楽器選定をしていくわけですが、僕は今までに、ちょっと楽器から音を出して「ダメだねこの楽器は」と言い捨ててしまうシーンを何度か見たことがあります。しかしその言葉の中には「吹きにくい」という意味が込められているように感じます。


吹きにくい。それは完全なる主観であり、吹き方の問題が大きいと考えます。


再び洋服に例えるならば、いつもTシャツしか着ていないからとボタンを着けていく作業がまどろっこしいために「この服は着るのがめんどくさい。ダメだ」と言い捨てて、存在そのものを否定しているようなものです。


これでは、出会えていたかもしれない最良の楽器を見逃してしまうかもしれません。大変もったいない。


本当にダメな楽器が存在していたとしても、その理由を可能な限り見つけたいところです。例えば、実際製造上の問題点、具体的には接合部分がおそろかになっている少々安いメーカーの楽器に出会ったことがあります。



ともかく、その楽器の良いところを見つけて、個性を認めると楽器はそれぞれ良い音を出してくれるのです。



楽器選定は好みを見つける作業であり、楽器に難癖をつける行為ではありません。





荻原明(おぎわらあきら)


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