先日、東京音大 吹奏楽アカデミーの専門実技試験がありました。吹奏楽アカデミーの学生も当然個人レッスンは必修ですからソロの試験があります。
いつも合奏の授業ではみんなの音を聴いていますが、ひとりひとりのソロを聴く機会はほとんどなくて、特に1年生は実技試験は初めての経験ですから、聴く側としては期待も不安もありますし、演奏する側も慣れていない緊張感があったと思います。
みなさんの演奏を聴かせてもらって感じたことをいくつか。
演奏はそれぞれ一生懸命頑張っていましたが、その中で大きく分かれる最大のポイントは基礎力だと再確認しました。難しいパッセージの箇所はたくさん練習して克服したと思われますが、単純なリズムが連続したり、音をのばしている瞬間、演奏が不安定になるのを何度か感じました。
こうしたシンプルなところで不安定になるのは曲の練習ではなかなか克服できず、やはりタンギングの練習やロングトーンの練習、リズムやテンポを正確に捉える基礎練習などを常に怠らず、クオリティアップを追求することが大切です。
もうひとつは、ステージマナー、ステージでのうごき。これはピアニストの学生にも当てはまります。
入退場時の歩き方、セッティングや挨拶、演奏中の音を出していない瞬間、チューニング、めくりの人の動き、ピアノのフタの開閉判断。そのような総合的な点です。
これらの判断材料、模範は「実際のコンサートを会場で聴くこと」に集約します。ソロでの立ち振る舞いに関しては特にリサイタルに行くことです。
「もし自分が舞台に立つ側だったら」を客観的に見て想像することで、実際に舞台に上がった時に大変役立ちます。また、コンサートホールで演奏を聴く経験は、立ち振る舞い以外にも、ピアニストとのアンサンブル、バランス、楽器がどのように会場に響くのか、奏者はどのような演奏をしているのか、その結果客席にどのように聴こえるのか。ホールのサイズ、ホールの響き、それらと楽器の響きの関係は、動画では理解できません。
インターネットでコンサートが簡単に視聴できるようになりましたが、会場で(できる限り一流の奏者の演奏を)生でたくさん聴く体験は、演奏をする人間にとって(プロとかアマとか学生とか関係なく)絶対に必要です。特に吹奏楽アカデミーは将来指揮者の立場でステージに上がる人も少なくないと思いますから、ソロのコンサートだけでなくオーケストラや吹奏楽など、とにかく可能な限りプロのコンサートに足を運んでもらいたいと思います。
ということで、これでひとまず大学内の今年度の大きなイベントは終わったかと思います(まだ終わってない人は頑張って)。また来年度、成長する姿を期待しています。
荻原明(おぎわらあきら)
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