Twitterを見ていると、とても多くのコンサート情報を目にします。その中には学校の吹奏楽部の宣伝も多いのですが、ひとつ気になることが。それは、
フライヤー(チラシ)に指揮者の名前がない
という点。
その数がものすごい多く、そして違和感を覚えます。
僕も部活の指導と本番の指揮をしていたときに、同じ経験をしたことがあります。
プロオーケストラやプロ吹奏楽団はむしろ逆で、指揮者の名前を前面に出してくることがとても多いですよね。「カラヤン/ベルリンフィル」とか「佐渡/シエナ」とか。演奏会やCDのタイトルになっている場合も多いです。
ではなぜ部活動の場合は掲載しないのか。
[指揮者って何?]
指揮者とは、監督です。
方向性を決める人。
音楽って、同じ作品でも演奏者によって少しずつ解釈が違いますよね。
「この場面はリタルダンドしてたっぷり演奏したい」
と思う人もいれば、
「ここは突っ切って勢いを感じさせる演奏にしたい」
という人もいて、その人の感性ですから、どちらも間違いではありません。
奏者の数だけ表現の可能性はあり、それぞれが強く音楽を感じることはとても素晴らしいのですが、複数人でひとつの作品を完成させる吹奏楽やオーケストラ、アンサンブルは「合作」なので、それぞれが自由な解釈のまま演奏してしまったら作品がまとまりません。
「ケーキを作ろう!」といって、それぞれ自分が好きな具材を持ち込んで、スポンジの上に好き勝手に生クリームだチョコレートだモンブランだムースだ納豆だと味付けしまくったら、とんでもないものが完成してしまいますよね。
そこで指揮者の登場です。
指揮者は「このケーキは生クリームといちごのショートケーキにします!」と決定します。
演奏者の中には、チョコレートケーキを作ろうとしていたり、モンブランがよかったなーと思う人もいますが、指揮者のイメージにあわせてみんなで最高のショートケーキを作ることに徹します。
指揮者によっては、生クリームの味付けや塗り方、いちごのサイズやその並べ方、装飾などのデザインの細部に至るまで徹底的にこだわる人もいれば、「できるだけシンプルに」などと方向性だけ伝えて奏者の個性に任せる人もいます。
しかし何にせよその指揮者とその奏者たちだから作られるユニークな作品になることには変わりありません。同じものは2度と作れないのです。
部活動で指揮者をしている人って、いつも一緒にいて、指導してくれて、時には相談にのってくれたり授業もしている先生だから、あまりにも身近すぎてフライヤーを作る際、ついその存在を忘れがちになるのかもしれませんが、「私たちはこの指揮者と一緒に音楽を作りました!ぜひ聴いてください!」と自信と敬意を持ってフライヤーに掲載するべきです。
たまに「私はただの顧問で音楽のこともあまり詳しくないから」と、半ば逃げ腰な指揮者の先生がいて、本人がフライヤー掲載を拒む場合もありますが、音楽監督としてのプライドと責任がなさすぎですから、それもダメです。
これから演奏会シーズンが始まり、フライヤー作成をし始める頃かもしれませんが、ぜひ指揮者の名前をババン!と掲載してください。
演奏者と指揮者でひとつの音楽を作っていることを忘れないでくださいね!
荻原明(おぎわらあきら)
0コメント