ネットで出回ってるこんな記事。
最初に言っておくとちゃんとした調査などせずにネットから情報をかき集めて、それがまるで多数の意見のように書く手法のniftyニュースなので、NHKなど他のマスコミのニュースと同列で見てはいけないのですが、それにしてもこき下ろしてるな、という印象を受けました。
日大のアメフト部の事件を吹奏楽部にも派生させて盛って盛って楽しそうに悪いこと書いています。願わくばこれを若い人たちが読んで真に受けすぎませんように。
ただ、書いてあることはウソではなく、事実です。でもそれは時代と、指導者の問題、要するに、当然全部の吹奏楽部がこんなことになってるわけでありません。
以下、ネット記事の書き方がひどすぎるのでフォローしていきます。ネット記事を読みながらこちらを読んでいただけるのがよろしいかと思います。
「吹奏楽部だって走ったり、筋トレもするし、下手な体育会系運動部よりきついと思いますよ。休みもまったくないですしね。私も年間360日は部活でした」
「毎日7時から朝練、夜は21時まで自主練など、運動部と変わらない練習時間でした。休日もほぼなく、夏の全国大会前の夏休みは毎日部活。騒音問題もあり、近隣に配慮して真夏も窓を閉めて、冷房がない部屋で汗だくになって合奏……。何度も意識を失って倒れました。ブラック部活の話をテレビとかで見ても『それぐらい普通じゃん』という感想しかないですね」
休みがないのは「一日休んだら三日遅れる」という戦後教育をそのまま受け入れ、効率的で内容の濃い短時間練習をすることができない指導者の力量不足に問題があることが考えられます。もちろん、ダラダラとやる気がない部活の雰囲気があるのかもしれませんからそれは一概にはわかりません。
走り込み、筋トレなんて今どのくらいの部活動が実践しているんですかね?統計とってみたい。これを実践させている指導者こそ、本当に勉強したほうがいいです。というか、こんな無駄で非効率な時間を使っているから休みがなくなるのでしょう。
「私はティンパニやドラムといった打楽器を演奏する「パーカッション」というパートでした。体育館で合奏したり、校外での演奏会のときとかは、その都度4階にある音楽準備室から大型楽器を階段で1階まで運ぶんですよ。それがめちゃくちゃ大変で……。しかも、顧問や先輩からダメ出しされるんです、『廊下は走れ!』って(笑)。当時は演奏よりも楽器運びに命を懸けてましたね」
打楽器を移動しているときに「廊下は走れ」と言う指導者、もしかすると、楽器を持っていないときに走れと言っているのかもしれないけれど、どのみち楽器に対する愛情や、そもそも廊下を走ってはいけない理由を理解していない。怪我をしたらどうするんだ、と。そうした奏者を奏者として労わる心がないのでダメです。走らされて息が上がって汗だくでフラフラして、そのまま休みを与えずに合奏に入り、練習の成果も発揮できない低パフォーマンスをして、「おまえ何やってんだ!」と怒鳴られるストーリーが見てとれます。そして二言目には「気合いが足りない」なんでしょ?
「自分のいた吹部では、顧問や指揮者は神様みたいに扱われてましたね。粘着質なコーチングや精神論もまかり通っていたので、まるで洗脳ですよ。逆らったら干されるし、逆に気に入られるとソロパートをやらせてもらえる。まあ実際『神』みたいな指導者がいると部活が強くなるのは確かですね」
気に入られるとソロパートを任される、これを発言した元吹奏楽部員の人は、多分正しい理解をしていません。妬みの匂いがします。
そもそも「指導者に気に入られている」のではなく、多分「その人が演奏で褒められた」を取り違えていると思われます。どんなに個人的にお気に入りであっても、ソロを任せるというのは一定のレベルに到達していないと難しいですから、そこは音楽的不公平が生まれるのは仕方がないです。
音楽は自己表現を自由にしていい芸術という領域の中に存在するひとつ。自分の思いを好きなだけ発信するのは大いに構いませんが、それには必ず受け止める人が存在していることを理解していなければなりません。そして良いか悪いかの判断をするのは、発信した音楽を受け取った(遭遇した)受け止める側(聴衆)です。だからどんなに「自分最高!」って思っていても、聴衆との温度差が生まれる可能性を理解している必要があります。だから仕方ない(という可能性を文章から感じました)。
自分は『ユーフォニアム』という地味な低音系の楽器だったので、ほかのパートがうらやましかったこともありました。『フルート』とか、華やかな楽器はやっぱりモテてましたしね(笑)。それでも当時は『パーカッションよりはモテるはず』という、目クソ鼻クソ的な“吹奏楽カースト”に囚われていました(笑)
ユーフォニアムと打楽器が下に見られるというのも、指導者がそれらの楽器の素晴らしさ、吹奏楽(音楽)における重要性を理解して、それを演奏者に伝えていないからそんなことになるだけ。
そんな神指揮者にも、ある日審判の時が訪れる。
「自分が卒業してから吹部が弱くなって、その指揮者が責任をとらされてクビになったというウワサが回ってきました。内心『ざまあみろ』と思って笑っていたところ、ある日地元の駅前のチェーン系喫茶店でその指揮者がバイトをしてるところを発見(笑)。当時の仲間にLINEしてみんなでお店に突撃しました。バイト中の指揮者に話しかけても『人違いじゃないんですか』ってシラを切るんですけど、名札を見れば間違ってない(笑)。あんなに偉ぶっていた人が『右手で少々お待ちください』なんて丁寧語を使っているだけでおかしくて」
野村さんは集まった仲間と大爆笑したそうだ。「でも、彼女も音大を出てすぐに吹部に雇われて、自分たちと一緒に何年間もブラック部活の毎日を過ごしていたわけで。クビになったからって、すぐに就職なんてできないですよね……。店を出てから切ない気分になりました」
インタビューを受けた人は25歳らしいですが、大人にもなって未だその実情を理解していないのでしょうか(回顧録のように書いているけれど、発言は今現在だから)。部活指導に来ているコーチをまるで職業のように捉えてますが、それはきっと違います。
というのも吹奏楽部指導だけで生活している人なんて、ほぼいません(将来は吹奏楽のコーチになるんだ!という夢を持っている中高生のみなさん、あれは職業にはなり得ませんから注意してくださいね!)。バイトして生活費を稼いで部活指導に来ているんです。それが最善かどうかは別として、事実そんな人はたくさんいます。そして、バイトは仕事ですから、そのお店の方針やマニュアルに則って働くことは当然です。業務に私情を挟むなんてバイトとして当然NGの行為。え?25歳にもなってそんなことも理解できていないの?もしかすると、この後にこのコメントした人は「まあ、そんな風に当時は思っていましたけど」とかフォローの文言があったのかもしれませんが。
なんだか最後まで読んで思ったのが、そもそもこれ、本当に取材してのコメントなのか?と。
取材、文/串守シャモ という何者だかわからない人物が(検索しても出てこないから、ライターではなさそう)自分の体験談を面白おかしくブラック色を盛って盛って盛りまくって書いただけではないでしょうか。
とは言え、部活動ってとても閉鎖的な空間で閉鎖的な活動をしているので、外部から来た指導者って、RPGで山奥の村に突然現れた勇者様みたいに簡単になれるんですよね。
「おお...伝説の勇者様...!」
ただ音大出ただけの指導スキルゼロの人でも「〇〇音楽大学卒業」という肩書きだけでこの地球を神と崇める存在にすらなれるので、そりゃあ気持ちいいですよね。だから「自分の居場所みーっけ!」みたいに居座る人も少なくない。
だから場合によっては絶対権力者、独裁者になることも簡単で、情報も経験も知識も少ない中高生にしてみれば、逆らえる要素もない。
でもスキルは持っていない。自分が中高生のときに経験してきた謎腹筋トレーニングをやらせ、謎ロングトーンをひたすら続けてふんぞり返ってる。ああ、よくあるパターン。
もちろん、とても勉強熱心で、愛情を持って素晴らしい指導をされている方もたくさんいらっしゃいますから、そこは誤解のないようにお願いします。
ちなみにこの記事に書いてあることとほぼ全部が僕の中高時代の吹奏楽部そのものでしたが(笑)でもそれ、30年も前のこと。もし本当に当時から部活動が変わってないんだとしたら…すごいなあ。
学校そのものが変革、改革、改良、改善をとてもめんどくさがる組織だから仕方がないのかもしれませんね。
荻原明(おぎわらあきら)
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