楽譜に書かれた文字

車を運転する技術と知識が完璧に備わっていても、道路標識の意味を理解しているか、などの走行ルールを知らなければ大変なことになります。


という話を先日トランペットのレッスンでしました。


みなさんは新しい楽譜を渡されて、最初にどこを見ますか?

多くの方が音符を理解しようとするのではないでしょうか。

たしかに演奏をするために音符...音の高さやリズムなどを読むことは絶対に必要なことです。

しかしそれだけでは情報が足りません。


楽譜には音符以外にたくさんの情報が書かれていて、原則、そこにあることは全部必要なことです。特に、文字...楽語と言いますが、作曲者からの音符だけでは書ききれない演奏指示や作品に対するメッセージが込められています。


特に、絶対に見逃してほしくないのが『五線の上に書かれた文字』です。


楽譜浄書の原則として「テンポに関する情報」は五線の上に書きます。メトロノーム記号とか、テンポを遅く、速く、直接的ではなくても結果的にテンポに影響を与える楽語もたくさんあります。


そうした情報を理解せずに音符を追いかけていってもテンポがわからないようでは練習になりませんね。また、合奏で「ここからテンポがかわるのだ」と認識していなかったら、ひとりだけ全然違うテンポで突っ込んでしまったり、想像しなかった速いテンポで曲が進み、指が追いつかないとか音が並ばないなどになってしまえば、周りにも迷惑がかかるし、自分も辛い。


テンポはそうした技術的な側面だけでなく、音楽の個性が決まる要素のひとつですから、その場面をどのように演奏したいか、どのようなテンポで演奏すると素敵だろうか、というイメージを固めていくことが必要です。


楽譜を見て合奏をする、というのは路上で車を運転するようなもの。楽譜はいわばドライブを楽しむための地図です。あらかじめ地図を読み込んで把握しておくことで、実際に運転(演奏)するときには、「次の場面はこういう展開が待ってるぞ」といった理解によって余裕が生まれるように譜読みをしてください。


隔週火曜日に連載している「ラッパの吹き方:Re」に先日、「楽譜のテンポに関する記号」について詳しく書きましたのでぜひご覧ください。


荻原明(おぎわらあきら)

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