昨日は東京音大シンフォニックウインドアンサンブル、通称Aブラスの演奏会に行ってきました。
Aブラスは今回で50回目の定期公演だそうです。歴史がありますね。
僕が東京音大に入学したのが今からおよそ20年前ですが、今回指揮をされる汐澤先生はそれよりももっともっと以前よりこの吹奏楽授業の指揮、指導をされていました(この吹奏楽は授業のひとつです)。もう80歳近いでしょうか。全くもってそうは見えませんでしたが。
当時の汐澤先生の印象は、とにかく「怖い」。授業の進め方も大変に独特で、とにかくプレッシャーと緊張感の連続でした。今回の公演についてフェイスブックで何人かの方が書いていらっしゃいましたが、年代関係なく異口同音に「ステージに登場すると自然と背筋が伸びる」とか「(当時のことを思い出して)聴いていて緊張した」といった感想を拝見しました。みんな同じだー。
しかしながら、ただ怖いだけではなく、汐澤先生の持っている大変に豊かな音楽的感性とバンドへの表現指導は学生の頃から非常に勉強になっていて、そのスタイルは今も変わらず続いていることを今回の公演で実感しました。トロンボーンに対する要求量の多さも変わってないなと実感しました(汐澤先生は読響の元バストローンボーン奏者)。
汐澤先生の指揮はとにかくかっこいい。洗練された武術を見ているような無駄のなくキレのある、そして曲線的な動き。ひとつひとつの動きが次へと繋がっていく一筆書きのような流れ。客席から見ていてもあれほどまでに釘付けになる指揮者はどれほどいらっしゃるでしょうか。
Aブラスは選択授業とは言え、150名ほどの管打楽器で構成される超大編成です。しかも最近では乗り降りがないので全員が全曲演奏します。トランペットだけで横一列15名。
したがって、この編成のまま課題曲も演奏するわけで、他ではあまり聴くことのできない独特な演奏になっています。
しかしながら、課題曲Ⅴ「ビスマス・サイケデリアI」には驚きました。あれだけの人数であの複雑な作品を大変明瞭に作られていて、演奏者ももちろんですが汐澤先生は本当にすごい方だな、と改めて感じました。
そして今回の公演の独特なところは、我が師匠の津堅直弘先生も指揮をされたことです。しかも曲はマルセル・ケンツビッチ「ユーフォニアム協奏曲『皇帝』」。ケンツビッチとは津堅先生の作曲時のペンネームです。
そしてユーフォニアムは吹奏楽アカデミーの教授でもある外囿祥一郎先生。
ケンツビッチ作品はありがたいことに初期の頃からずっと楽譜浄書を担当させていただいていて、この「皇帝」も真っ先に完成版を見たのが僕でした。そしてすぐに師匠に「このソロパートは音域やら音価(音符の細かさ)は間違いではないですよね???」と質問したくらい、ちょっと普通じゃ考えられないないソロユーフォニアムの演奏難易度の高さ。トランペットからテューバまでの音域が書いてあるわけで、それに加えて音の細かさは尋常ではありません。
そしてそれを演奏してしまう外囿先生も普通じゃありません。
なんかですね、もう普通じゃない作品を普通じゃ無い人たちが普通に演奏しているので、感覚が麻痺してくるんですよね。
しかも「皇帝」の後にソロアンコールとしてスパークの「パントマイム」を演奏してくださいましたが、いや、それはメインプログラムに使う曲じゃないんですか?と。
何かがおかしい。
汐澤先生も津堅先生も外囿先生も東京音大の学生もみなさんの音楽に対する向き合い方と音楽を魅せる力の高さに驚愕し、そして自然と笑顔になる、そんな活き活きとした公演でした。
みなさまお疲れ様でした!
さて今月末は吹奏楽アカデミーの初の本番があります。Aブラスのような大迫力の演奏はできませんが、また違った吹奏楽の魅力をお届けできるよう学生も講師陣も真剣に向き合っておりますので、ぜひご来場をお待ちしております。
荻原明(おぎわらあきら)
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