バンドメソッド研究(東京音大吹奏楽アカデミー)

東京音大吹奏楽アカデミー専攻の授業「バンドディレクション」。2週に渡って教材研究と題し、吹奏楽で使ういわゆる「バンドメソッド」について合奏形式で研究しました。


どこの吹奏楽部でも何かひとつは使っているバンドメソッド。それをひとつずつ授業で取り上げ、どのような内容なのか、どのように使うことが効果的か、そういったことをみんなで考え、意見を出し合う授業でした。


お恥ずかしながら僕は(時代もあるのかもしれませんが)とにかく情報も技術も知識もない外部と繋がりのない隔離された吹奏楽部にしか所属した経験がなく、バンドメソッドという存在はかろうじて知っていましたが、それを使う習慣がありませんでした。

指導する側になっていろいろな部活に顔を出しても、結局はコンクール直前だったり、バンドメソッド以前のもっと根本的な実践をしているとタイムオーバーになってばかりで全然知識がなく、今回の授業内容は大変有意義なものとなりました。


管楽器の世界は最近になってやっと正しい知識や方法が確立してきたように感じますが、それはインターネットの影響が強く関係していると思います。正しいこと、そうでないことはあるにせよたくさんの情報がリアルタイムで飛び交う世界になり、それまでの教則本が出版されて初めて情報や方法を手に入れられる時代とはだいぶ変わりました。しかもこうした書籍は出版と同時に鮮度が落ちていくわけですから、利用する側が検証し、加筆修正して「現在解釈」にしていかなければなりません。黄色いアーバン金管教本に書いてあることをすべて鵜呑みにして練習したら...今の時代では無理がありますよね。


要するに、バンドメソッドも書いてあることを全部鵜呑みにしてそれが絶対正しいと思っていると逆効果になりかねないわけです。

今回研究対象になったメソッドもそういった点がたくさんありました。しかし、「出版されている」「書籍も著者も有名」「ユーザーが多い」「昔から使っているから」などの理由で教則本という書籍は完璧な存在と勘違いしがちです。そうならないために最新の知識とスキル、そして具体的な方向性をしっかり持った指導者がきちんと教則本と向き合って検証することが大切ですから、それができる人を現場に呼ぶことがもっとも重要で、効率的なのだとわかります。


また、教則本は書いてあることを書いてある通りに左から右へと演奏しても得られるものは少なく、非効率的です。そもそも教則本を使用する目的は「楽曲を演奏するため」であり、目的意識のないまま惰性で使用するしても意味がまったくありません。なぜ、何のために教則本のこの部分を使うのか、そしてどう使うのか、これが大切。


音程やピッチを良くしよう、ハーモニーをキレイにしようなど目標を持つことはできても、それを実現のものにするために必要な知識や工夫、具体的な方法がわからずにウロウロしてしまっている場面をよく見ます。「音程が悪いので注意してくださーい」などのコメントがその最たるものです。注意して変わるなら最初から良いはずですから。


今一度考えていただきたい。


音階を練習する意味とは?

キレイなハーモニーって何?

どうすれば実現するの?

そもそもなぜ基礎練習をするの?


練習とは、到達する目標があるから行うのです。「ハーモニー練習」と書かれた部分をみんなで毎日やっていても、美しいハーモニーは生まれないのです。教則本は受け身で使っても意味がありません。

今回の授業は担当の中橋先生が解説、進行をされましたが、学生が指揮台に立ち、実際にメソッドを使用して吹奏楽部指導のシミュレーションを行いました。

バンド指導は臨機応変さと知識・実践の引き出しの多さが重要です。団体ごとに人数も個々の技量も違うわけですから、あらゆる状況に対応できなければなりません。そして演奏する人たちに音楽を作り上げることの楽しさ、合奏の楽しさ、上達する意欲を持った奏者になってもらう、そんな指導が理想です。

吹奏楽アカデミーの授業では、その研究も実験もいくらでもできます。とにかくどんどんやって、どんどん意見を交わして、どんどん失敗して、そしてフレキシブルな指導力を身につける。講師もみんな本気で取り組んでいます。積極的に行動して、講師から盗めるものはどんどん盗み、一歩一歩進んでもらいたいと思います。



荻原明(おぎわらあきら)

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