音楽のレッスンは、教則本や楽曲を用いて様々な技術的、音楽的な内容を学び、それらを少しずつ積み上げる流れが基本です。
しかし、レッスンで先生に何かを教わった瞬間スキルを手に入れられることなどゲームじゃないのでまずありません。
すべてはレッスン終了後、教わったことを消化吸収するための試行錯誤によって自分のスキルにするしか方法がありません。したがって、レッスンという存在は宿題や課題とそれを自分のスキルにするためのヒントを与えられる時間であり、それを次回のレッスンで披露することによって確認や修正をされた上で、次の課題とヒントをもらう繰り返しなのです。
僕はこれを「レッスンはお土産をもらう場所」と表現しています。
いやー、レッスンって大変ですね。テンション下がっちゃう方もいるはずです。なんか怖そうだし。だから僕は思うんです。音楽のレッスンはこの方法や流れでないと絶対にダメなのだろうか、と。しかし、この流れが世の中のほとんどすべてのレッスンスタイルなんです。その理由は2つあると考えます。
1.「上達すること」が目的になっているから
もちろんそうです。音楽のレッスンを受けてヘタになられたら困ります。そうじゃなくて、レッスンという楽器が演奏できる時間にプロ奏者がそこにいるのだったら、他にもできることっていろいろあるのではないか、と思うのです。
もちろん初心者の方の場合、音が出せるようになるとか、楽譜に書いてあることを理解したり運指を覚えてもらったりと最初の課題はこなしていく必要はあります。
2.講師のレッスンに対する固定観念
いや、もうこれだと思います。
音楽教室の講師というのは、音楽大学や専門学校やプロフェッショナルの現場に携わった経験のある人がほとんどです。はっきり言って僕も含めてこれまでに受けてきたレッスンというのは課題がバンバン出され、どんどん難しいことを要求され、それをこなすためにヒーヒーいいながら毎日何時間も楽器を演奏し、それでも怒られたりして(昔はそういう先生がたくさんいました)、半泣きになって何年間、場合によっては何十年もレッスンを受けてきた人ばかりです。
僕のトランペットの師匠はそんな理不尽に怒るなんてことありませんでしたが、これからプロになるんだ!と意気込むことで自ら生み出したプレッシャーに何度も押し潰されそうになりました。
そんな経験によって「レッスンとはこういうもの」という固定観念やプライドが頭や心のどこかに残っていると、趣味でゆるーく楽しくやりたいと思っている人にも、温度差のある厳しさやキャパを超えてしまう課題を出してしまうことは考えられます。
生徒さんが言う「先生と合わない」の理由のひとつはこのような温度差によるものではないかと思うのです。
ですから、最も基本的なレッスンスタイルを希望されている生徒さんにはもちろん課題を出しますが、その方の意気込みだけではどうにも解決できないお仕事や勉強、部活の忙しさは講師側で鑑みて、「なんでやってこないんだー!」なんてことは絶対にいいません。
どこまで行っても趣味は趣味であり、生きるために優先することはいろいろあるわけで、生きるためにレッスンをしている私たちとそもそもの立ち位置が違う点を見誤ってはいけないのです。
先ほど言ったようにレッスンの基本スタンスから逸脱して、「音をおもいっきり出せる時間」とか「講師と一緒に2重奏したい」とか、楽団の曲を演奏する際のヒントになることを教えてもらうとか、生徒さんそれぞれのレッスン時間に対して希望することを叶えられるようにするのも講師の役割だと思います。
これは講師の妥協でもプライドがないわけでもありません。すべては音楽の最も根底にある「楽しさ」を求める行動です。音楽の楽しみ方は千差万別。トランペットを吹く理由もレッスンを受ける理由もみんな違うのです。
したがって、生徒さんそれぞれがレッスンに何を求めているかを定期的にディスカッションすることが大切で、生徒さんもどんどんリクエストすべきで、自分にとってできるだけ心地よく、楽しい時間を自分でも作る努力をしてほしいと思います。
今現在、僕がそうしたことをどこまでできているかわかりませんが、常に心がけていることではあります。
荻原明(おぎわらあきら)
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