あなたには責任が取れるのですか?

アンブシュアに関してが最も多いのですが、「音程が悪いといつも言われてどうしていいか」など、これに似た悩みや疑問、質問をされる生徒さんはとても多いです。


アマチュア同士のやりとりでこの話題が出てしまうのは、ある意味しかたがないのかもしれませんが(本当はダメですが)、問題なのは、これを指摘している中に(自称)プロが多く含まれている点。


人にアドバイスをするというのは、本当に本当に難しいことです。何に関してもこれは同じで、誰かの受け売りや見た目から感じただけのこと、理論の成立しない内容については迂闊にすべきではない、と思うのです。もしくはどうしても言いたいのであれば「考えるきっかけになって欲しい」という願いを込めた必ずフォローの言葉が含まれている必要があると思います。


だから僕はレッスンでこうした質問を受けた際、質問追求の形をとります。


生徒:アンブシュアが悪いと言われた
オギ:それについてどう思う?
生徒:見た目は悪いのかもしれないと思っているけどどうすればいいかわからない。

オギ:見た目が悪いとは?

生徒:鏡を見た時に左右のバランスが違う

オギ:左右バランスが違うとダメなの?

生徒:まっすぐが良いと思う

オギ:その根拠は?

生徒:うーん...上手に吹けるから

オギ:その根拠は?

生徒:うーん...わかりません


ほぼ毎回ですが質問追求して論理的な結論にたどり着ける人はまずいません。奏法面において論理が破綻しているものはすべきではない(人に言うべきではない)、と僕は考えています。

相手のためを思って言ってるのか、くだらない自己顕示欲なのかわかりませんが、ツイートをされたいわたけいこ氏(東京音大の同期です)がおっしゃるように、言われた人は本当に悩んでしまうのです。言った人、無責任すぎますよね。


でも部活や一般団体などは長い期間一緒に演奏する人なので、言われて悩む人には必ずこう伝えています。


「論理的につながらないのであれば全部無視。でも『ありがとうございます!』と笑顔で伝えておきましょう」


ですから、レッスンをしている側も本当に奏法的アドバイスは慎重にすべきです。感覚的だったり、自分が奏法面でそれをやっていないからと生徒さんを否定するのは良くありません。自分の中で論理的に結論が出せたことだけを強制されるのではなく、提案や考え方のひとつとして伝える必要があります。

一方で演奏表現における音楽的なものはイマジネーションの世界ですから、論理的、現実的に解決できないことがたくさんあります。これらは経験値が豊富な人がどんどんその引き出しを惜しげも無くプレゼントしてあげたいものですね。これらは選択肢のひとつなので無害です。

ただし、その表現をするにあたって必要になるタンギングとかヴィブラートとか、呼吸だとか、そういった点はやはり奏法面のことですから、論理が完結しているものを伝えて、実践方法も具体的である必要があります。でも必ずそれはひとつの方法としての提案であるべきで強制的にそうではなければならない、という言い方や実践をしてはいけないのです。



結論:迂闊に人に何か言うのはやめましょう。




荻原明(おぎわらあきら)




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