東京音大吹奏楽アカデミー、毎週月曜の授業「バンド・ディレクション」。
今回は客員教授の作曲家、天野正道先生でした!
天野先生と言えばコンクールでもよく演奏される交響組曲「GR」の作曲者でもありますし、最近ではエヴァンゲリオンの吹奏楽編曲、そのコンサートの指揮者としても出演されているので、ご存知の方も多いかと思います。
個人的には、音楽教室のレッスンで大変重宝してますトランペットの2重奏楽譜で以前よりお世話になっております。
先週の作曲家の中橋先生の講義に続きまして、天野先生も吹奏楽を作曲家の観点からお話くださいました。
今回のメインはみんな大好き和声学のお話。
和声...音大で単位を落としそうになる授業のひとつです。音楽って和音でできているのに学生のときって、その原理を学ぶとなるととたんに億劫になるのはなぜでしょうか。
和声の理解は音楽に関わるすべての場面で活用できるのですが...なんでかなー、学生のときにもそれは絶対わかっていたはずなんですが、めんどくさそうに授業受けていました。先生ごめんなさい。
今回のお話では、音大の和声の授業を実用性があるものに昇華することが大切であると天野先生はお話されました。そこで、アカデミーの学生4名にお手伝いしてもらい、和声を理解できている場合とそうでない場合の楽譜で、聴こえ方がどのように変わるのかを実験してみました。
古典和声でやってはいけないとされるいくつかの音の動かし方がなぜいけないのか、実際に聴くと明確です。
少し話がそれますが、管楽器での和声では、各楽器の持っている音域を理解していることが重要です。ピアノ譜であれば音の重なりは一目瞭然ですが、管楽器の場合基本1パート1段の楽譜を使用している上に移調されて書かれていることがほとんどです。そして例えばサックスは移調され、さらに実際に聴こえる音は記譜よりも1オクターブ以上低い音が出るわけで、それを知らないで中音域が和音を鳴らしているときにサックスがメロディックに動くと、音同しがぶつかって聴こえ方がおかしくなる可能性があります。
また、音楽は和声の進行を元に、いくつかの基本的なルールや方法の上で様々に変化しているので、そのルールを理解できていれば原形のコードも見つけやすくなります。
こういった力は将来吹奏楽指導者になったときに大変重要で、必要なことです。
僕自身も気をつけなければと常に思っていることですが、最近は誰でも印刷譜が作れる時代になりました。しかしそこに落とし穴があります。見た目には美しいけれど、その中身がよろしくない場合があるのです。吹奏楽部で使用する市販の楽譜の中にもそうした理論的に見た場合に効果が薄かったり、聴こえ方に問題のある箇所が含まれていることが多く、奏者は楽譜通りきちんと演奏しているのに、指導者が楽譜の問題点を見抜けなかったばかりに奏者の問題にしてしまうようなことが起こると、みんなが悲しい思いをしてしまう可能性が出てしまうわけです。
そのようなことも含め、理論をきちんと持っていると様々な場面で効率化を図れます。部活の活動時間が短縮されてきた今だからこそ、指導者がしっかりと理論的に効率よく練習を重ねていけるアプローチを図ることが大切で、今回の天野先生の授業ではそれらを気づかせていただけるきっかけになりました。
毎回思うのですが吹奏楽アカデミーでは学生たちが「指導者になるため」と言っているだけではなく、まずは我々講師が学生に対してそうした指導者になっていかなければならないわけですから、他人事ではなく学び続けていかなければ、と身が引き締まる思いです。
大変興味深い内容でした。天野先生は客員教授ですので、今後も引き続き授業など様々な場面で学べる機会がありますので、ひとつひとつ大切に積み重ねていって欲しいと思います。
天野先生、ありがとうございました!
荻原明(おぎわらあきら)
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