以前どこかで(このブログかな?)書いたことがあると思うので、重複してたらごめんなさい。ちょっとSNSで目にしたもので。えっと、
「音色を変えるにはどうしたらいいですか?」
という質問てとても多いのですが、結論から言うと
「音色は変わりません」。
いやいや、音色変えてる人いるじゃない。実際にレッスンでこの質問をされた時にも、僕自身が今まさにあなた音色を変えているじゃないか、と言われたこともあります。
どういうことか。
音色を変えることに対して、考えられることとその方法が混在しているから話がまとまらないんですね。良いかどうか別として僕は音色を変える方法は3つあると思うのです。
1.楽器が変わる
最もわかりやすいのが、トランペットからフリューゲルホルンに持ち替えれば、同じ奏者なのに違う音が出せます。見事に音色が変わりました。これと同じ発想で、コルネットへの持ち替えもそうですね。ミュートも装着すると音色が変わります。
それと、マウスピースの深さも音色には大きく影響します。
ということは、音色を変えたいのであれば、そのとき必要なものを5本でも6本でも揃えておけば良いわけですが、でも質問者はそういうことを言ってるわけではありません。1本のトランペットで音色が変化していくことについて言及されています。
ちなみに、あまりマウスピースをコロコロ変えるのは個人的にはおすすめしません。
2.自分の体で音色を変える
質問者さんはきっとこれが知りたいのだと思います。だから僕は「音色は変わりません」と言いました。だって、人間もマウスピースも楽器も同じだったら出る音はもう同じじゃないですか。楽器にはツボがあり、そのツボはイコール楽器の音です。
もしも本当に音色が変わるのだとしたら、それは吹き方を変えてしまっているわけで、それはバランス崩れが起きている時の正しくない音です。それをすればどこかにボロが出るわけで、例えば音がはずれたり、ピッチが合わなかったり、バテたり、調子が崩れます。
3.聴く人が音色が変わったと感じさせる演奏技術
ハイレベルな俳優さんってすごいですよね。昨日のドラマでは刑事役だったのに、公開中の映画では凶悪犯を演じていて、そうかと思えばバラエティ番組でとってもチャーミングな一面を見せてくれたり。いったいこの人の素の状態はどれなのかわからない。
でも、顔は当然同じ。役ごとに整形を繰り返すとか、そんなことはしません。でも観ている側はその人の演技がまるで本当のその人の性格であるかのように感じ、のめり込んでしまう。
表現する、ってそういうことです。
同じ顔だけれども目つきや声のトーン、口調が変わる。これは音だけで表現する演奏者も同じです。優しくて愛らしい演奏をしたかと思えば、聴く人が恐怖する強烈なサウンドを出し、ワクワクするようなファンファーレを演奏して、涙する旋律を奏でる。
何を変えたかと言えば、ニュアンスです。例えばタンギング。滑舌良いタンギングをすれば、聡明で潔白、リーダー的、ちょっとドライな印象を与えられるかもしれません。役者さんの口調と同じです。
音色の密度を下げて、フレーズの語尾を優しくおさめる演奏をすれば、優しさ、丁寧さ、儚さなどの印象を聴く人に与えられると思います。
そうした様々な表現ができれば、聴く人は「音色が変わった」と感じてもらえると思います。
しかし音のツボを捉えて楽器が最も効率よく鳴る状態は絶対にキープするわけですから、そこから生まれてくる音色はすべて同じと考えています。
また機会があれば、「ラッパの吹き方: Re」にでも詳しく書こうと思います。
荻原明(おぎわらあきら)
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