音程というのは2つの音の隔たり(距離)のことなので、先に鳴った音との関係を安定させることが「良い音程」と言えます。
もちろん、最初に鳴った音が基準になるわけですから、正しいピッチ(周波数)で鳴らしてくれないとその後に続く音が苦労しますので、そういった意味で基準ピッチ(=チューナー的安定ピッチ)は必要です。
しかし合奏で「音程が悪い」と指摘を受けた時、ほとんどの奏者は真っ先に自分の目の前にあるチューナーを見て「チューナー的安定ピッチ」を出そうと(手段を選ばず)試行錯誤という名の奏法や楽器のいじくり大会が始まってしまいます。この状態で最もマズいのは、完全に1人の世界に入ってしまう点です。
仮にこのような強引な方法でピッチが合ってもそれは瞬間的なものですから、次に音を出した時にはまた合わなくなっています。
このようにして奏者が個々にチューナー的安定ピッチを狙う行為は、例えて言うなら目を合わせずに定型文で会話をしている状態です。
「オハヨウゴザイマス」
「オハヨウゴザイマス」
「イイオテンキデスネ」
「ソウデスネ」
「デハサヨウナラ」
こんな感じ。雨が降っていても「イイオテンキデスネ」。これは会話ではありません。決まり切ったセリフをタイミングを合わせて発しているだけです。会話だと思うと不自然であることは一目瞭然でも、同じことを合奏でしていることに気づいていない人は結構います。
再度申しますが美しい音程は、先に鳴らした音を基準として次の音を安定させる=美しい音程をあらかじめイメージ(ソルフェージュ)して実際の音にすることです。
もし合奏で音程が悪いと指摘を受けたなら、聴覚という視野を広げて周りの音を聴きましょう。周りには音がたくさんあり、そのたくさんの音と自分の音はどのように共存すると美しいのか。それを、演奏前にイメージ(=ソルフェージュ)するのです。
そのためには音楽の基礎的なスキルを身に付けることも必要ですし、正しい楽器の奏法を身に付けることももちろん大切ですが、それ以上に「美しい音程」を体感することです。美しい音程はハーモニーディレクターで鳴らした純正律の和音ではありません。
音楽ホールで聴く生の響きの美しさで体感するものです。
音程感を身に付けるためにはチューナーばかりに頼らずに音楽をすることからだと思っています。
チューナーの上手な使い方を身につけておきたいですね。
荻原明(おぎわらあきら)
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