東京音大吹奏楽アカデミーの授業のひとつ、バンド・ディレクション。
今回は中橋先生による教材研究でした。教材研究は4年間かけて巷に出回っている吹奏楽の基礎練習教材すべてを取り上げるそうです。
その中で今回の教材は作曲家の保科洋氏監修「スーパーサウンドトレーニング」。
この教本は他のそれとは趣旨が異なり、タイトル通りサウンド作りを追求する内容です。
教則本を計算ドリルのようにただ繰り返したり、楽譜に書かれていることを演奏して「はい終わり」では意味がありませんし、もったいない。その本(著者)の目的や趣旨を理解し、その上でどのように利用するかを考える。そのためには楽曲と同じようにきちんと読み込む必要があります。
僕自身の個人レッスンでも生徒さんに質問したり一緒に考えることは多いです。
例えば音階であっても、それがスラーなのかスタッカートなのか、テンポはどうか、ダイナミクスは、どのような場面での演奏なのかなど、可能性を考えていけば無限に広がります。
今回のスーパーサウンドトレーニングも、基本的にダイナミクスはmfで、カッコしてfが書いてあるからと、それだけでOKなはずがありませんね。そもそもなぜmfとfが書かれているのかをまず考えたいところ。そして指導先のバンドのレベルや編成、これから演奏する作品や、バンドが求めているスタイルに合わせて教本を利用する必要があります。
今回の授業では学生それぞれが指揮台にあがり、バンドを指導するスタイルで進行しました。まだ1年生で引き出しが少ないのはしかたないですし、何よりバンドの中に講師がわんさかいるのがとてもやりにくいのは当然ですが、そういったこととは別に「楽譜に書いてあることを実行して、その結果に対してジャッジする」だけでなく、指導者自身がバンドとどのようなことを築きたいかを明確にした上で「教則本を利用する」発想に変換していけたらいいな、と感じる授業でした。
どうしても日本人は「ダメ出し」の文化が根付いていて、「反省」と言えば悪いことばかりを挙げてしまいがちだし、良くするためには「悪いものを潰す」発想に陥りがちです。
もちろんそれも方法なのかもしれませんが、指導者もバンドも楽しさを感じ、その上で意欲的にならなければ意味がないと僕は思いますので、ぜひ前向きで建設的な発想で、そして失敗を恐れずグイグイとやってもらえれば嬉しいです。
今回も自分自身が考えること、勉強になることがたくさんの授業でした。
荻原明(おぎわらあきら)
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