非常に短期間(その日だけ一緒に演奏をするとか、ひとつの本番を共にするとか)しか一緒にいないアマチュアや学生の奏者に対して、解決までに時間を必要をするアドバイスは無責任になってしまうため、敢えてしません。
これは多分、多くのプロ奏者の方が同じ考えを持っていらっしゃると思います。
レッスンは原則的に「継続」して行われるものです。何か一つのテーマについて、まずその概要や方法、考え方(の一例)をお話します。そして参考のための見本(=暫定のゴール)として演奏し、聴いてもらいます。
1回のレッスン時間でそのテーマを解決することができる場合もありますが、ほとんどの場合(僕の場合)はそうした短期的な解決を求めていません。レッスンで得た情報を元に次回のレッスンまでに試行錯誤して欲しいからです。そして次回のレッスンにいらした時にその結果を披露していただき、完成形として問題ないか、または方向性は合っているけれどもう少し継続して研究が必要なのかをお伝えします。場合によっては様々な理由から本来進むべきレールを間違えていたり脱線してしまっていることもあります。また、前回からまったく変化がない場合はその理由を尋ねます(とは言え「なんでやってきてないんだ!」とは決して言いません。アマチュアの方は練習する時間がないくらい他のことでとても忙しいのは重々承知していますから)。
このように1回のレッスンの中であっても計画性やストーリー構成が必要であり、それが大変重要なのですから、短期的にしか一緒にいない方に対し、しかも頼まれたわけでもないのに(レッスンという環境でもないのに)無闇にアドバイスをしても、本人を困惑させてしまうだけです。詳しい解説も解決策も言う時間もないのに、指摘だけするのは無責任な自己顕示でしかありません。
しかし、生徒さんからとてもよく聞くのですが、アマチュア同士ではそれがかなり多いとのこと。例えば「そのアンブシュアじゃ上手く吹けないよ」とか言い捨ててしまうなど。そして分析もカウンセリングもせず短絡的に「こうするといいんだ」などと具体的で危険な発言までしてしまうようです。
確かに、YouTubeとか見ていても頼まれてもいないのにコメント欄に「言い捨てアドバイス」を書いている人、結構多いですよね(自称プロみたいな人も同じようなことしているのをTwitterなどでよくみかけます)。本人は良かれと思って言っているのかもしれませんが、無責任で非常にお節介ですから控えるべきです。
そもそもレッスンは教える側が自分の知識をひけらかしたり、上から目線で偉そうなことを言う場では決してありません(それは昭和のレッスンです)。その人が今よりも成長したいと思う意欲を高め、今よりもっと楽しく演奏できるために、自分の持っている知識や手段をその人のために工夫して伝える時間です。これには洞察力や計画性が必要です。そして最も大切なことは、そこには責任が存在している、という点です。
思ったこと、気づいたことを軽々しく相手に(良かれと思って)言うのはアドバイスではありません。相手から教えて欲しいと正式に依頼がないのに言うべきではないし、依頼があってそれを請けるのであれば最後まで責任を取る覚悟が必要であると考えています。
荻原明(おぎわらあきら)
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