部活ってなんだろう?

東京音大吹奏楽アカデミー専攻の主軸となる授業のひとつ、「バンド・ディレクション」では現在Zoomを使った双方向のやりとりでの授業を行っています。毎回のテーマに沿ってみんなで発言し、考えていく流れです。

これは昨年の授業の進め方と同じで、ネット上であっても多少の制限は感じるものの、スムーズに行われているように感じます。


とにかく何よりも、学生のみなさんがとても積極的に発言してくれることが素晴らしく、まだ直接会っていない新1年生も事前にきちんと考えたり調べたりしていることがわかります。


今回のテーマは「テレワークでの吹奏楽指導」。現在インターネット上で部活動の演奏動画がたくさん流れていますが、それだけでなく今後も引き続き密になって活動することが困難かもしれない学校生活、果ては活動時間の削減などをカバーするためにも、インターネットをどのように活用することが考えられるか、というテーマでした。


インターネットで流れてくる大勢でひとつの作品を演奏するテレワーク合奏は本当にすごいな、と関心するばかりです。各自が一生懸命演奏するのは通常の部活動と同様だと思いますが、ひとつひとつの動画を合奏をしているように重ねていき、編集する労力はテレビ局の編集のようにプロの技術者ではありませんから、相当な労力と時間がかかっているはずです。

多分ですがほとんどの場合大人、それも顧問の先生が中心となって編集をしているのだと思われますから、ただでさえ忙しいのに頭が下がるばかりです。


さて、そうした合奏が動画としてひとつの記念になるのはとても嬉しいことかもしれませんが、部活動の本質とは何だろうと考えた時に個人的には、やはり直接人間同士が同じ空間で共有できるあらゆる要素が最も大切だと思うのです。

授業中にも学生から出ましたが、お互い教えあったり指摘しあったり考えたり、そうしたものは、インターネット上でも不可能ではありませんが、やはり複数の人が直接そこにいるからできるものが多いと考えます。音楽理論や演奏の改善をするためのアドバイスだけならオンラインでもできる部分が多いのですが、音楽にとって最も重要なのはリアルタイムなコミュニケーション、心や気持ちを合わせることで生まれる音楽だと思うのです。


相手がニコッっとしたら何だか嬉しくなって気付いたら微笑んでいる自分がいたり、

泣きそうな人がいたら心配になって、緊張して、励ましたり一緒に悲しくなったり。

嫌だなと思うことを言われて腹が立って言い返して喧嘩になったり、

でもお互いの気持ちを理解して仲直りしたり、前より仲良くなったり。


音楽はまさにこうした心と心の共鳴によって生まれるものだと思うし、音楽だけでなく学校生活全般がこうした心を育むためにあると言っても良いくらいです。


部活動は学年の垣根を超え、生徒たちが中心となって同じ興味のあることを軸として活動できる貴重な時間ですので、ただ完成度の高い演奏を目指すことを目標にするのではなく、それらに通じるすべての過程、みんなで一緒にすごした時間それらが部活動の本質だと思っています。


今すぐにそこまで戻すことは難しいとは思うのですが、部活動ってなんだろう?と各自で考えて、オンライン上などで意見を巡らせることができれば今後進むべき道が少しでも見えてくるかな、と感じます。



それにしても、早く本当の合奏、したいですね。




荻原明(おぎわらあきら)

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