レッスンの時間と回数について考える

レッスンを受けるにしても、1回のレッスンが60分なのか30分なのか、毎週なのか隔週なのか、それとももっと自由なペースなのか、それらによってレッスンそのものの印象が変わります。

当然生徒さんがレッスンを受ける目的によっても違うとは思うのですが、長年音楽教室で講師をしていると、なんとなく共通して見えてくるものがあるので、どこまで参考になるかわかりませんが書いてみたいと思います。


[1回のレッスン時間について]

60分レッスン

これは僕のレッスンで最も推奨しているペースで、集中力の維持できる時間だと感じます。

レッスン内容はその生徒さんによって様々で、基礎的な内容と、吹奏楽やオーケストラなど演奏団体に所属されている方は楽団の曲を、そうした団体に所属せずお一人で趣味で演奏されている方は興味のある作品(ソロ曲や2重奏)にチャレンジするなど、時間を半分に分けています。もちろん、60分すべて基礎的なことをやりたい方はそのようにしておりますが、僕としては様々な作品に触れることも基礎的な内容を理解するために必要だと思うので、できるだけ教本だけで終わるレッスンにはしたくないと思っているのが正直なところです。なんにせよ60分という時間はとてもカリキュラムを組みやすい長さだと感じます。


30分レッスン

30分レッスンは一瞬で終わります。よく忘れがちなのがレッスン時間という枠の中には入室→荷物を置き→楽譜を譜面台に出して広げ→楽器を出してセッティング、そしてレッスンが終わってから片付けて退室する時間も含まれているという点。ですから実質25分程度しかありません。

60分レッスンのようにカリキュラムを半分に分けると、教本10分、作品10分くらいにしかならず、大変慌ただしくなるのでどうしても内容が未消化な傾向になります。かと言って今回は基礎だけ、次回は曲だけとなると、レッスンは受けていても内容の継続ができず意外に忘れがちになります。それに、僕の場合はただ楽器を吹くだけでなく楽譜の解釈や簡単な理論、奏法面での理論的なお話やフィジカル面での確認など多角的な内容でレッスンをしているため、ヘタすると30分楽器を吹かずに終わる可能性も出てきます。

生徒さんがどこからどのくらいの時間をかけて教室にいらっしゃるかはそれぞれ違いますが、レッスンを受けるための移動時間や準備時間などを考えると負担は大きいのでは、と考えてしまいます。要するにあまり推奨しておりません。それであれば60分のレッスンを回数減らしたほうが効率的であると考えます。

ただ、集中力が続かないお子さんの場合、まずはレッスンの雰囲気に慣れるための時間としては最適です。


90分レッスン

90分が長いと感じるかどうかはカリキュラムの組み方と生徒さんの求めている深さで大きくかわります。

例えば、音大や音高受験で集中的に膨大な内容をこなしていく必要がある場合はこの時間は最適です。コンクールなどを受けるために作品を深く解釈するとか、基礎と作品と音楽理論の3つの柱をバランス良く学ぶ場合もこのくらい時間があったほうが良いと思います。

ですから、「それくらい必要な内容だから結果的に90分になった」というものだと考えます。



したがって、もうおわかりだと思いますが、レッスン時間の長さと上達スピードは関係ありません。すべては内容量によるものです。

ちなみに僕が講師をしているプレスト音楽教室には45分というレッスン時間もあるのですが、個人的にどうにも使いにくい長さのため、トランペットクラスは実施しておりません。



[レッスン回数について]

上記のレッスン時間が1ヶ月に何回あるか。これによってもだいぶ変わっていきます。


1ヶ月2回

僕はこれがベストだと思っています。レッスンというのは情報量がとても多い時間なので、それを消化吸収する時間が必要です。

レッスンを受けたその瞬間は、知識が増えて感性が豊かになり、発想の引き出しが増えるために、なんか上手になったように感じるのですが、試行錯誤を繰り返して自分のスキルに昇華して初めて上達したと言えますから、レッスンを受けただけでは実はまだ何も変わっていないのです。これは決して無責任なことを言っているわけではありません。僕の言葉ですが「レッスンとはお土産をもらう場所」なのです。知識などのお土産を手にいっぱい持たされた状態でしかない、ということです。

違った観点から言いますと、1ヶ月2回のペースというのはおよそ隔週でレッスンが入るために、他の予定が入れやすく、調整できる可能性が高い点もメリットで、したがってレッスンキャンセルをする頻度が少なくなります。


1ヶ月1回

仕事や勉強に大忙しで、趣味に使える時間が少ない方には良いペースかもしれません。

ただ、正直1ヶ月に1回しか教わらないと忘れてしまうことが多いと思います。少なすぎて かえって面倒になり、モチベーションが下がることも考えられます。そもそも他のことで忙しいわけですから、優先順位が最初から低めであることも理由のひとつです。

しかしこのペースは内容によっては非常に「便利なレッスン」を受けることができます。

例えば自己研究に余念がない方がこのペースでレッスンを受けることで自分のやっていることが正しいか確認をし、質問を多くすることで軌道を誤らないで進み続けられるということ。

例えばセカンドオピニオンとして利用する。メインで習っている先生と並行して、より深い理解や納得する目的を持つなど。

例えば上達するとかそういうのは度外視で単に曲をおもいきり吹くためだけのストレス発散時間にするとか。二重奏なら一緒に吹いてアンサンブルできるのでそれも楽しいと思います。


レッスンの基本は「積み重ね」です。レッスンで手に入れた知識や方法を自分のスキルに昇華して、さらに高度なことやクオリティの高いものを手に入れていくこと。しかし、これはプロを目指す音大生が持つ目的とも言えます。僕はレッスンというのはもっと自由なものだと考えているので、そうした古典的発想で、趣味でやっている人たち全員にその方法を強制させる必要はないと思っています。だから「上達する気はない」という意思もアリだと思うし、講師がそれを尊重すべきだと考えます。まあ、本当のことを言うと「上達する気はない」と考えている生徒さんに「もっと上達したい」と感じてもらうようなレッスンをしていくことこそが講師の力の見せ所とも言えますが。



1ヶ月3回

30分レッスンの場合や、60分レッスンでもトランペットを始めたばかりの初心者の方の場合、このペースで手取り足取り忘れないように地盤を固めることは良いと思います。

ただ、しっかりした内容のレッスンだと情報過多になって消化しきれないかもしれません。音大や音高を受験する方など、情報量の多さをハイペースで消化吸収する訓練も目的とするならば良いかもしれません。

受講してみるとわかりますが、1ヶ月に3回というのはもはや毎週受けている感じ=いつもトランペットのことが頭の中にある状態になりますので、それが堪らなく楽しいのであれば良いですが、ストレスに感じる可能性もあります。




[熱しやすく冷めやすいタイプはご注意]

とても熱量が高い状態で教室にいらしてくださる方は僕としてもとても嬉しいのですが、「60分レッスンを1ヶ月4回受講したい」とおっしゃったりする場合は一度冷静になっていただくよう今回のようなお話をしています。

その強火の熱量を中火くらいに抑えてガス欠にならないよう長く継続するほうが有意義なレッスンになります。



いかがでしょうか、レッスンを受けるにしてもその時間と回数で印象は大きく変わります。ご自身の目的やモチベーションと比較して最もベストなペースを見つけてください。

レッスンに関するお話は今後もこのブログで書いていきたいと思います。




荻原明(おぎわらあきら)


0コメント

  • 1000 / 1000