フレキシブル楽譜の使い方(東京音大吹奏楽アカデミー)

東京音大吹奏楽アカデミー専攻の授業、バンドディレクションは様々な角度から吹奏楽について学べます。


今回は准教授で作曲家の中橋愛生先生から「フレキシブル楽譜の活用法」について学びました。


通常吹奏楽と言えばフルートはフルートパート、トランペットはトランペットパートと特定のパートが演奏するよう指定されていますが、フレキシブル楽譜の場合は例えば「パート1はフルートかオーボエかクラリネットかトランペットのどれか」「パート6はファゴットかバスクラリネットかバリトンサックスかテューバかコントラバスのどれか」と、音域さえカバーできれば演奏ができるよう作られた楽譜です。


実はとてもタイムリーだったのですが先日、講師をしているプレスト音楽教室のアンサンブル発表会というのがありまして、そこで管楽器の参加者全員で合奏をしようと企画が出たのですが、音楽教室ですから、経験年数もレベルもバラバラの管楽器の皆さんが一緒に合奏を楽しむためにどうしたら良いかと考えたとき、このフレキシブル楽譜の存在を思い出しました。

これだったら、演奏レベルの高い生徒さんと初心者で合奏にも慣れていない方がそれぞれの実力を発揮してサポートし合って演奏できます。結果的にとても良いステージになったと思います。


今回の授業で初耳だったのが、フレキシブル楽譜ができたきっかけです。僕はてっきり少子化が進む日本で少人数の吹奏楽部が増えていることに着目した日本の出版社が考案したものだとばかり思っていたのですが、実は、僕が音楽教室で行った企画とまさに同じで、大勢で練習回数少なくても曲になるために作られた外国が発祥のものなのだそうです。


僕の発想はフレキシブル楽譜の正しい使用方法の一つだったのです!(すごいこと思いついちゃった!とか思って鼻息荒くしてたのはナイショ)


今回の授業は合奏形式で中橋先生自身が以前作曲されたフレキシブル編成のファンファーレを使わせていただきました。


フレキシブル編成のメリットは先ほど書いたように人数が少なくても、それがアンバランスな編成でもとりあえず作品を完成させられる点です。かと言って、やはり楽器によって音量やサウンドのバランスが異なるわけですから、担当するパートを配慮しないと作品の魅力が失われてしまいます。

そこで今回の授業では、どの楽器がどの場面でどのパートを演奏するのか、いわゆる「オーケストレーション」について、いくつかのパターンを示し、結果を聴き比べてみました。


たまーにですが僕も大編成で編曲(と言ってもトランスクリプション)をする際、一番考えるのが、担当楽器の重ね方です。僕は常に「重ね方」考えて編曲をしていたのですが、中橋先生いわく、吹奏楽におけるオーケストレーションはTuttiの音が重なっている状態からいかに減らしていくのか、だとおっしゃっていました。

なるほど確かに多くの楽器がユニゾンで演奏することの多い吹奏楽では、楽器が減ることで生まれるサウンドがあります。この言葉は大変勉強になりました。


今回の授業では学生にオーケストレーションについて考えてもらい、場面ごとに提案をしてもらった編成でどれだけ聴こえ方が変わるのかを実験、体感しました。リアルタイムでこんな実験できるなんて相当貴重です。


さらに中橋先生のお話の中でフレキシブル楽譜は、奏者の人数が足りないから使うだけでなく、大人数の奏者が充実しているバンドでも上手に使えうと効果的な基礎合奏の練習になることを知り、なるほど納得の大変有意義な授業となりました。

秋学期(後期)のバンドディレクションはこの先も実践的な内容が多いので、ひとつひとつどのような展開になるのかとても楽しみです。




荻原明(おぎわらあきら)

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