東京音大吹奏楽アカデミー専攻の授業のひとつ「バンド・ディレクション」。これまでもこのブログでたくさん紹介して参りましたが、今回が年度内最終回。
各自印象に残った回だとか、自由に発言してもらいました。入学して間もない頃と比べてとても成長したな、と客観的に思っていたけれど、それ以上に本人たちの中でも考え方や見方が変わってきている自覚は強いらしく、将来どうしたいのか迷っている、という話が多かったように感じます。
講師の先生方も一言ずつお話しましたが、僕自身あまり上手くまとめられなかったのでここに追記しようかと思います。
バンドディレクションにゲスト講師として来てくださった方は、今年度は学校の先生、部活動の指導者がほとんどでした。主にコンクールなどで優秀な成績をおさめた学校がどのような経緯でそこまでたどり着いたのか、そして現在どのようなことをしているのかなどをお話してくださいました。
そうした方々のお話を聞いていて最も強く感じたのが「愛情の深さ」「熱量の高さ」です。
音楽に対しても、子どもたちに対してもそれは強く感じます。
僕自身も特に中学校の頃は吹奏楽に対する情熱だけで3年間を、高校生の時にはトランペットと音大受験に対する情熱だけで生きていました。体力もいるし大変なのは大変なのですが、情熱が強すぎて弱音を吐く時間もない、そんな感じ(今もあまり変わってないのですが)。
しかし情熱だけでは形になりません。部員が集まり、スタッフやコーチが集まり、練習に励み、結果も残す、そうした一連の流れが実現できるのは指導方法や運営方法などが具体的だからです。
それらが実現できているのは基礎があるからだと思います。そしてそうした基礎を築くためには様々な経験(これはもちろんたくさんの失敗も含まれます)、紆余曲折があってのことでしょう。
僕はそこを大切にしてほしいと思うのです。要するに食わず嫌いをせずに何でもとことんチャレンジして、自分のフィールドを荒削りでもいいから広げていってほしい。
これは大人になるとなかなかできないこと。例えば正直なことを言うと、僕はジャズやアドリブといったことに対して追求してこなかったため、特にアドリブはまったくできません。音大の中でそうしたカリキュラムがなかったと言ったら言い訳で、「自分にはできないことだ」と最初から決めつけて、実行に移さなかったことが原因です。
クラシックの世界だったら必要ないと思うかもしれませんが、管打楽器であれば吹奏楽でポップスも演奏することですし、もし教員になって、その学校がビッグバンドをやっていたらどうしましょう。ジャズの作品をレッスンをしないとも限らない。
実際僕も個人レッスンではジャズを希望する生徒さんもいらっしゃいますし、吹奏楽をされている方は本番が近くなるとポップスの作品を持参してくる場合も少なくありません。しかも以前楽器だけのバンド(いわゆるドラムやエレキギターと一緒に演奏するバンド)で演奏したことが一度ありますが、その時に「なんかソロやって」と言われてフリーズしました。引き出しがゼロだったからです。本当にもったいないですよね、こうなっちゃうの。
実際にアドリブソロを要求される場面は確かに少ないかもしれませんが、それを勉強することで調性、和声の実践的知識、メロディを生み出す力があれば編曲などにも有効ですし、音楽はいろいろなところで関連し合っているわけで絶対に損はしません。
だから大学の特に1,2年生の頃は荒削りでいいから、とにかく思いつくもの全てに手を出してみることをおすすめしたいです。
そうしていく中で、自分自身の中で今まで芽生えてこなかった部分への情熱が高まる可能性が十分にあります。
今持っている夢や目指す進路があることはとても素晴らしいので引き続き努力を重ねていってほしいのですが、それだけに留まらず広い視野で何でもチャレンジしてほしいな、と思いますし、このバンドディレクションという授業はそのきっかけ作りとしては最高の材料になるはずです。
この授業の最終目的は、学生が指導者としてのスキルを身に着けるために、講師や後輩によって作られたモデルバンドを指導すること。これまでの経験や知識量がそこで試されるわけですから、これからもたくさん学んでほしいと思います。
来年度もますます楽しみです!
荻原明(おぎわらあきら)
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