呼吸のはなし(腹式呼吸と胸式呼吸)

昨日「鼻呼吸」「口呼吸」のお話をしました。

同じように「腹式呼吸」「胸式呼吸」といった言葉についても疑問を感じています。


僕はレッスンで必ず呼吸についての解説を行います。個人差はありますが、30分から60分程度の時間をかけてきちんとお話します。


レッスンで、呼吸、とりわけ吸気の仕組みについて解説するまでもなく完全に理解されていた方は経験則で1%程度。いかに管楽器の世界で呼吸の話題が多いにも関わらず、その正しい解釈ができていないかがうかがえます。


理論の裏付けがないままわからないことを「きっとそうだ」と憶測で補填してしまうと、そこに都市伝説が誕生します。そのひとつが今回の「腹式呼吸と胸式呼吸」。


これらの言葉を呼吸の仕方の2つの異なる方法ように解釈している場面によく出会います。やれ胸式呼吸では演奏できないとか腹式呼吸のトレーニングをするとか...本当にそうなのでしょうか。


吸気は、簡単に言えば肺の周りにある胸膜腔が陰圧(圧力が下がること)になることで外気が体内に流れ込んでくる「現象」です。その陰圧を生み出しているのが横隔膜と肋間筋。

(出典:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1619)


そして横隔膜が下がればその下にある腹腔が圧迫されてお腹が膨らみます。ただし、そのお腹の膨らみは体格差や時間的な状況などによっても異なるため、視覚的な判断でお腹が膨らんでいないから吸気ができていないだとか言えるものではありません。

また、肋間筋が収縮(はたらく)と、肋骨を広げるために胸周辺が膨らむように見えます。


こうした視覚的なものを差別化したくて勝手に「腹式/胸式」と呼んでいるにすぎず、実際の吸気はその両方が働いているわけですから、区別するだけ意味がないのです。

それに、空気が入ったから膨らんだのではなく、空気が流れる陰圧状態を発生させるために筋肉が収縮したりその結果腹腔が圧迫されたりしているわけですから、順序を勘違いしている方も結構多いです。


呼吸は大して難しい理論ではありませんから、学習さえすれば誰でもわかるはずです。都市伝説化せず、ぜひとも正しい理解をして欲しいと思います。そのためには、「教わる=教えてくれる」と思わず、自分で調べ、研究し、理解することが大切です。学ぶこととは本来受け身ではなく自主的に行動することだと考えます。


吸気に関しては、このブログではないところで詳しく書いています。今回の話題を正しく理解するための材料として、もっと詳しくご覧になりたい方はぜひこちらをご覧ください。

また、以下のリンクも有料記事ではりますが、もっと詳しく実践的なところまで呼吸について書いておりますので、よろしければぜひご覧ください。



荻原明(おぎわらあきら)


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